転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


367 アマショウの実っておいしいだけじゃないんだって



「みんな、なかなか帰ってこないね」

 ミラさんたちはプリンの材料を取ってくるねって出てったんだけど、もう帰ってきてもいいのにって時間になっても帰ってこないんだ。

 これがいつもだったらお家に置いてある卵とか牛乳で作っといて、ミラさんたちが持ってきた材料をもらえばいいんだよね。

 でも僕たち、こないだまでイーノックカウに行ってたでしょ?

 お出かけするって事で、そう言うのはみんな使っちゃって何にも残ってないんだよね。

「ほんとにそうね。みんな、どうしたのかしら?」

 リンゴはみんな切っちゃったし、アマショウもプリンアラモードにする分は熟成が終わっちゃって僕もレーア姉ちゃんも何にもする事が無い。

 だから二人して、帰ってこないねぇって話してたんだけど、

「ただいま。ごめんね、遅くなって」

「卵はあったんだけど、牛乳が見つからなくて」

 そしたら、エイラさんたちがそう言いながら帰ってきたんだ。

 卵は森で拾ってくるのだけじゃなく村の中でも作ってる人がいるけど、牛乳は他の村から買ってこないとダメなんだよね。

 だから自分のお家になかったら見つけるのが大変なんだって。

「うちで聞いてみたら、今村の人が買いに行ってるからご近所も持ってる人、いないんじゃないの? って言われちゃってね」

「そんな訳で、この人たちに分けてもらう事にしたの」

 そう言いながら、外にいる人に声を掛けるエイラさん。

「うむ。邪魔をするぞ」

「私たちまで、いいのかしら?」

 そしたらね、お家の外からお爺さん司祭様とシスターのおばさんが入ってきたもんだからびっくりしちゃった。

「エイラ、あなた司祭様から牛乳をもらって来たの?」

「だって、本当に村の誰も持ってなかったんだもん。その時にミラが、司祭様なら持ってるかもって言って」

 でね、レーア姉ちゃんは司祭様から貰ってくるなんてってエイラさんに怒ったんだけど、そしたらミラさんが言い出したんだよって。

 だから今度はミラさんの方を見たんだけど、

「前にシスターが、ヤギの乳はあんまり好きじゃないから、必ず次に牛乳を買ってくるまでは飲み切らないって言ってたもの」

 そしたらそう言いながら、よく思い出したでしょって笑うミラさん。

「だからって、司祭様から貰ってくるなんて!」

「よいよい。それにのぉ、ルディーン君が新しいお菓子を作ると聞いて、とても食べたそうな様子だったからな」

「あら、司祭様も甘いものはお好きではないですか」

 おまけにお爺さん司祭様とシスターまでこんな事を言い出したもんだから、レーア姉ちゃんは黙っちゃったんだ。


 みんなも帰ってきたし、材料もそろったって事でプリン作りだ。

「レーア姉ちゃん。僕、司祭様たちの分のアマショウを作っちゃわないとダメだから、プリンはお姉ちゃんが作って」

「いいけど、どれくらい火を入れたらいいのか知らないわよ」

「そっか。だったらさ、蒸すのは僕がやるから、そこまではお姉ちゃんやって」

 とは言っても、人数が増えちゃったからプリン液は作り方を知ってるレーア姉ちゃん任せ。

 でも、プリンを作るのに使う入れもんだけはお家にないから、いっつもポシェットに入ってる鋼の玉を使って人数分のカップを作ったけどね。

 それを渡して、お砂糖を焦がして作るカラメルとプリン液を入れたら教えてねってレーア姉ちゃんに頼んでから、僕はお爺さん司祭様たちの分のアマショウを、熟成のスキルで甘くすることにしたんだ。


「ほう。変わったものを持っておるのぉ」

 レーア姉ちゃんやエイラさんたち、それにシスターさんまでプリンを作る方に行っちゃったもんだから、お爺さん司祭様は暇になっちゃって僕の近くに来たんだ。

 でね、僕が出してきたアマショウを見ると、白いお髭をなでながらこんな事を言ったんだよね。

「司祭様、アマショウの事、知ってるの?」

「うむ。これはのぉ、血の圧が高いものが薬として食すものとして知られておる」

「そうなの?」

 お爺さん司祭様はね、ケガやご病気と違ってそう言うのは神殿が使う魔法では治せないんだよって僕に教えてくれたんだ。

「血の圧が高くなると体調を崩したり、ひどくなると血の道がふさがって死んでしまう者までおるのだ」

「へぇ、怖いんだね。でもさ、体の中は見る事ができないでしょ? だったらなんで、そんなのが解るの?」

「それはのぉ。血の圧が高い者の多くは塩を多く使う地域に住んでおるのだよ。だからそのような所では、定期的に魔法で調べてもらう者が多いのだ」

 この魔法はね、神聖魔法じゃなくって一般魔法に入るんだって。

 だから神官さんだけじゃなくって、お薬を使ってご病気を治すお医者さんの中にも使える人がいるそうなんだよ。

「そっか。便利な魔法があるんだね」

「うむ。それにのぉ、この魔法は血の圧だけでなく病気の原因なども解るから神殿でもなるべく使えるようにと指導しておるのだ。しかし、これがまた発音のしにくい魔法でのぉ」

 こんな魔法が使えたらとっても便利でしょ?

 だから神殿にいる人は使えるようになってねって言われるらしいんだけど、キュアとかと違ってうまく発動しない人とがいっぱいいるんだって。

「へぇ、どんな魔法なの?」

「それな、メディックと言う魔法だ」

 この世界の人たちってキュアの”ゅ”みたいなちっちゃい文字を発音するのが苦手みたいなんだよね。

 その中でも”っ”は特に言いにくいらしくって、その上ちっちゃい”い”までは言ってるから使えない人が多いんだってさ。

「その点、君は魔法の発音がしっかりしておるからのぉ。この魔法も使えるのではないか?」

「簡単に使える魔法なの?」

「うむ。魔力循環ができて、なおかつ発音さえできれば誰でも発動する」

 この魔法って魔法使いじゃないお医者さんでも使えるくらいだから、ジョブを持ってない人でも使える簡単な魔法らしいんだよね。

 だから一度使ってみてってお爺さん司祭様が言うんだ。

「そっか、じゃあやってみるね」

 と言う訳で、僕はメディックの魔法をお爺さん司祭様に使ってみたんだよ?

 そしたら本当に使えて、お爺さん司祭様がとっても健康なんだって事が解ったんだ。

「司祭様、とっても元気なんだね」

「うむ。日々、健康には気を付けておるからな」

 それを教えtレあげると、お爺さん司祭様はにっこり。

「しかし、できるとは思っておったが、教えて一度目で発動するとはのぉ。君の口は本当に、魔法の発音に向いておるのだな」

 そしてその後、偉い偉いって僕のあまたをなでながらほめてくれたんだ。


「ところで、ルディーン君。話を戻すが、このアマショウの実をどうするのだ? これは無味に近く、味付けをせねば食べられないと記憶しておるのだが。砂糖を使って煮込むのかのぉ」

 お爺さん司祭様はね、甘いお菓子を作るんだよってエイラさんたちに連れてこられたのに僕がアマショウを出してきたからびっくりしたんだって。

 だからもしかして、これをお砂糖で甘くするの? って聞いてきたんだよね。

「ううん、違うよ! これはね、熟成って言うスキルを使うと、とっても甘くなるんだ」 

「なんと。この実が甘くなると言うのか?」

 これを聞いたお爺さん司祭様はびっくり。

「うん。さっき食べてみたけど、とっても甘くなるんだよ。司祭様のも食べてみる?」

「うむ。一つ、ご相伴にあずかるとしよう」

 そう言うと、僕が熟成をかけて甘くなったアマショウを持つと、皮をむいてパクリ。

 そしたらね、一瞬だけお目めをカッって開いて、その後は味わうようにして残りを全部食べちゃったんだ。

「なるほど。これは確かにとても甘くて美味い実になっておる。しかし、このアマショウにこのような食し方があるとはのぉ」

「みんなは知らないの?」

「うむ。少なくとも、わしは知らなんだ」

 そう言えば、アマショウを熟成させるのはとっても難しいんだっけ。

 魔道具を使えば甘くできるらしいんだけど、長い時間をかけないとダメって言ってたから魔道リキッドをいっぱい使わないとできないよね?

 って事はいっぱいお金がかかっちゃうって事なんだから、熟成のスキルを知らない人はアマショウがこんな風に甘くなることを知らなくってもおかしくないか。

「実を言うと、この実は煮るとすぐに崩れて嫌な食感になってしまうから野菜などと一緒に炒めるのが一般的なのだが、粘りがあるためか苦手としておる者も少なからずいてのぉ」

「そうなんだ」

「だが塩味などでは嫌がられるこの粘りも、甘くなったことによりアクセントになってこの実を美味たるものにしておる。このような食し方ができれば、多くの者が助かるだろうな」

 そう言いながら、うんうんって頷くお爺さん司祭様。

 でもね、僕がこの熟成ってスキルはみんなが使えるんじゃないんだよって教えてあげると、途端にしょんぼりしちゃったんだ。

「なんと、これは一部の料理人しか使えないスキルだろ言うのか?」

「うん。僕に教えてくれたアマンダさんがそう言ってたよ」

 それにね、普通に熟成させるには魔道具がいるし、それがあっても長い間その魔道具を使いっぱなしにしないとダメだからとってもお金がかかっちゃうかも? って事を教えてあげたら、

「そうか。ならば金持ちや貴族ならともかく、多くの人々がこの甘いアマショウを口にするのは不可能だな」

 そう言ってもっとしょんぼりしちゃったんだ。


 アマショウの実の新事実。実はこの実は血圧を下げる薬として使われていました!

 まぁ知っている人は知っていると思いますが、バナナにも血圧を正常にする効果があるそうなのでそれほど驚く事でもないんですけどね。

 そして当然食物繊維も多いのでお通じもばっちり! ただ、ルディーン君がいないと美味しく食べられないけどw

 話は変わってメディックの魔法ですが、実を言うとこれも設定魔法としてルディーン君のステータス画面の一般魔法の中にも載っていたりします。

 ではなぜそれをルディーン君が知らないのかと言うと、これが特殊な魔法としてレベルによって並んでいるほかの魔法とは違うところに書いてあるからだったりします。

 そして今回、お爺さん司祭様から教えてもらって使えるようになったのでわざわざステータス画面で使い方を調べる事も無いんですよね。

 なのでルディーン君は残念ながら、このような特殊な一般魔法がある事を知る事は無いと(苦笑)


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